熱帯林には毛色で仲間を識別するカラフルなリスがいる


多摩森林科学園の研究員による研究成果を紹介します。

東南アジアの森林は生物多様性が極めて高く、なかでもリス類では世界で最も多くの種が生息する地域です。しかし、これらの種の系統関係や共存メカニズムは十分調査されてきませんでした。本研究では、同じ森林に生息している近縁なリスの種間で互いの種をどのように識別し、生殖的に隔離されているのかを、実験的および遺伝学的に検討しました。
調査対象としたフィンレイソンリスは、黒、白、赤色など目立つ毛色をもっています。同じ地域には近縁種である、褐色のクリハラリスや橙色のハイガシラリスも生息しています。そこで、リス類の体色を再現した5色(黒、白、赤、橙、褐色)を作成し、正解の色を識別できたら報酬として餌を与えるという学習実験を行いました。その結果、橙色に対して黒、赤、白を識別でき、褐色に対して黒や白は識別できましたが、赤だけは識別が困難でした。これはリス類が二色型色覚(注)であることと関係があり、白、黒、橙色が同種の認識に有効であることを示しています。
次に、遺伝的な関係を調べたところ、橙色のハイガシラリスは明らかに別のグループに分かれましたが、これまで別種と考えられていた褐色のクリハラリス(図のG4)とカラフルなフィンレイソンリスは明確に二分されませんでした。むしろこれらは、大きな川や海に隔てられた7つのグループに分かれ、それぞれ別の種に分化していく途上にあると考えられます。目立つ毛色は地域的に隔離されることによって偶然獲得された形質だと考えられますが、多様な近縁種が共存あるいは隣接して生息する熱帯林では、その毛色が同種を認識し、種分化を促進する可能性を持つことが分かりました。(は)
(注)二色型色覚とは、2つの異なる波長に感度のピークを持つ。3つの波長に感度のピークを持つ人間やサルの多くは三色型色覚である。三色型では識別できる赤と緑を、二色型では感受しにくい。


図:タイに生息するフィンレンソンリスの毛色多型と遺伝的グループ(破線で示す河川や海で遺伝的に7つのグループ(G1〜G7)に分けられる)

この研究の関連論文(英文)は2本あり、こちらのページ(Tropical Zoology)と、こちらのページ(Mammalian Biology)で見ることができます。森林総研の最新の研究情報は「研究最前線」のページで紹介されています。