DNAからわかったサクラ栽培品種の真実 −そのほとんどは雑種が起源−

桜DNA
多摩森林科学園には多くの種類のサクラが収集・保存されており、DNA解析による正確な識別と起源の推定を進めています。多摩森林科学園の研究員が行った研究を紹介します。

サクラは日本人にとって馴染み深い花木の一つで、ソメイヨシノに代表される一重の品種から、八重や枝垂れ(しだれ)、二季咲きのものなど、数多くの栽培品種が存在します。そのサクラ栽培品種がDNAで正確に識別できるようになったことは数年前に当研究所からプレスリリースしました。そして、それらの栽培品種がどのような野生種を起源とするのかを、本研究で明らかにしました。
‘枝垂桜’(親種エドヒガン)、伊豆桜(親種オオシマザクラ)のように、1種の親から選抜されたものは少なく、多くの栽培品種が(自然も含む)種間交配に由来していました。その代表例が’染井吉野’で、これまでの見解通りオオシマザクラとエドヒガンの交雑に由来していることが確認されました。
栽培品種サトザクラの仲間は野生種オオシマザクラが元になったと言われていましたが、それ以上のことはこれまでわかっていませんでした。今回の解析により、’太白’(たいはく)、‘上匂’(じょうにおい)など多くの栽培品種で野生種ヤマザクラとオオシマザクラの交雑によることが明らかになりました。なかには、’白雪’(しらゆき)のように、「オオシマザクラ」、「ヤマザクラ」、「マメザクラ―オクチョウジザクラ系統」の3種が交雑していると考えられるものもありました。
一方、これまで行われてきた形態による分類の結果を覆す発見もありました。‘長州緋桜’(ちょうしゅうひざくら)という栽培品種は花弁のピンク色が強いことから白いオオシマザクラとピンク色のオオヤマザクラとの交雑起源が推定されていましたが、オオヤマザクラは起源でなく、これまでサクラの品種形成にはほとんど貢献していないと思われていたタカネザクラとオオシマザクラの交雑起源であることがわかりました。
サクラの栽培品種の交配親には他にもオオヤマザクラ、カスミザクラ、チョウジザクラの国内野生種やカンヒザクラ、カラミザクラの台湾・中国原産の野生種がかかわっており、サクラの栽培品種が多様な野生種から作られたことを物語っています。こうした成果は、サクラの栽培品種の管理や今後の新品種作出の有用な情報となります。

この研究の発表論文(加藤珠理ほか、英文)の情報は、Tree Genetics & Genome誌のページをご参照ください。森林総研の「研究最前線」はこちらのページで紹介されています。