秋に咲くサクラと春に咲かないサクラ(2)

染井吉野
1からの続き)休眠できないのではなく、目覚めることができなくなる場合もあります。休眠した花芽は冬季の低温刺激によって休眠が打破されます。これは葉芽についても同様です。ところが冬でも暖かい地域では、この休眠打破がうまくできずに、暖かくなってもなかなか目覚めないという現象があります。日本では奄美大島以南だと’染井吉野’(写真)の生育が難しいといわれていますが、その原因のひとつはこの冬の暖かさが影響していると考えられています。5℃くらいの気温がもっとも休眠打破に効果があると考えられていますが、那覇の最も寒い1月の平均気温は16.3℃であり、休眠打破に必要な低温にはなりません。

’染井吉野’がうまく目覚めることができない現象は徐々に北上しているのではと考えられています。地球規模での気候の変化や都市のヒートアイランド現象などによって各地で冬季の気温の上昇が報告されています。東京では当面そのような事態に直面することはないと考えられますが、遠い未来では’染井吉野’が生育できない地域となっているかもしれません。(い)

多摩森林科学園「サクラ保存林ガイドブック」